風の教えるままに ジュノ編 9-1
2006年 07月 22日
巨大な黒雲が、ヤグードたちの群れを抜けようと必死になっていたフェイリーたちの眼前に、突然現れた。
「グッキー! そこからはなれろっ! 」
クリエルの声と同時に、黒雲の中からヤグード数体が出現し、グッキーへスタンの魔法を掛けたかと思うとフェイリーをつかみ上げ黒雲の中へと戻っていった。
「フェイっ!!」
スタンの魔法が解けると同時に、グッキーはためらいもなく黒雲の中へと後を追い飛び込む。ライゼルもまた、その後に続いた。
「おいっ!! グッキー! ライゼルっ!!」
クリエルの制止の声もむなしく、黒雲の中へ消えていく三人を追いかけようとするが、身動きすることがままならずに雲が消えていく様子をただ見送ってしまった。
「いっやぁぁぁぁぁっっ!! どぉしたらいいのよぉぉぉぉっっ!!」
半分パニックに陥ったジェイトンの声がソロムグ原野に響く。
「こいつらを何とかしない限り、無理だな」
「ふ、二人でなんて無理よっ!」
ジェイトンの言葉に、クリエルはそうだろうか・・・と思う。
『確かに。絶体絶命の状況だが・・・・・いや、あの時のことを思い出せ。そうだ、まだまだこんな生ぬるい状況であたふたしていたら、友に笑われるのではないか?
考えろ・・・冷静になれ・・・』
突然静かに目を閉じ始めたクリエルに、ジェイトンもつられるように静かになった。
クリエルが考え、出した作戦にいつでも付いていけるように静かに深呼吸し気持ちを落ち着かせる。
「ジェイトン。範囲魔法をヤグードが集中しているところにぶつけろっ!」
「トカゲちゃんは?」
「無視」
「や~~ん・・・。今日二回もまともに呼んでくれたぁ」
「気のせい」
ジェイトンの範囲魔法がヤグードの群れを襲う。
「精神が続く限り同じ場所にうてっ!!」
「ぇー」
クリエルの拳はトカゲに、ジェイトンの魔法はヤグードたちへと続いていた。
闇のような雲の中。
すべてが薄暗く、身にまとう空気は息をさせまいとするかのように重く澱んでいた。
そんな中でフェイリーはヤグードに抱えられた状態でいた。薄い半透明の幕の向こうにグッキーとライゼルが透けて見えていた。
「た・・・たすけて・・・・」
小さくつぶやいたフェイリーを、ヤグードは祭壇のような場所に連れて行き、投げるようにその場に置いた。呪縛の魔法を掛けるとフェイリーから離れ呪文を唱え始めた。
グッキーとライゼルはフェイリーを抱えあげているヤグードと対峙していた。
「フェイを離せっ!」
切りかかろうとするライゼルをグッキーが止めた。
「まった!」
「なぜですっ!」
剣をヤグードに向け、いつでも仕掛けられる体制のままグッキーを振り返りライゼルが抗議の声をあげた。
「落ち着いてよく見て・・・・幻影だ・・・」
「え・・・・」
よくよく見てみると、ヤグードの足元がゆらりと揺らめいていていて、少し透けている。
「本体はどこだろう・・・」
落ち着いた様子でグッキーは部屋の中を見回す。薄暗く円形の部屋の中には、通路どころか扉ひとつ見当たらない。
「閉じ込められた?」
ライゼルが少し不安げに言う。
「目の錯覚かもしれないし、違うかもしれない・・・壁を触りながら探すしかないね」
言うが早いか、グッキーは壁を探り始める。ライゼルもまた、グッキーとは反対側に周り壁を探り始めたのだった。
「ふう・・・一周しちゃったねぇ・・・・・」
二人は部屋の壁に沿って一周し対面したところで立ちすくんだ。あせる気持ちとどうしたらいいのか考えあぐねている自分への苛立ちとで解決策が思い浮かばない。
と、一陣の強い風が二人の側を駆け抜けた。
「うわっ・・・」
飛ばされそうになったグッキーを慌ててライゼルが支える。
風は強い流れのまま部屋の中を渡り、やがて消えた。
「なんなんだ・・・?」
ライゼルが風の吹きぬけた部屋の中をゆっくりと見回す。
「グッキーさん! 部屋の中心をみてくださいっ!」
ライゼルの指差す部屋の中心部を見るとほのかに光ってみえる。
「もしかして・・・・」
二人は頷くと、うっすらと見える光の部分へと向かいその場に立った。
ブゥン・・・・・と吸い込まれるような音と共に、二人は光の中へと吸い込まれていったのだった。
薄暗い部屋から今度は松明が壁にともされた通路にでたグッキーとライゼルの周囲で、再び風が吹き始める。それは、まるで二人を誘うようでもあり、守る様でもある不思議な風であった。
「行こうって言ってるみたい」
グッキーの言葉に反応するように、風は二人を優しく包み、やがて前方に小さな竜巻となって現れた。
「うお・・・・すごい・・・」
思わず、グッキーは驚きの声を上げた。
「て、いうか、なんでしょう・・・これ・・・?」
信じていいのか悪いのか、ライゼルは判断しかねているようだった。が、その小さな竜巻に何のためらいもなくついていくグッキーを見て、慌てて後を追うしかなかった。
「バニシュガ3っっ!!!」
ジェイトンの強力な光の攻撃魔法が炸裂し、ヤグードの群れの中にぽっかりと穴が空いていく。
「くりちゃんっ」
「よくやった! つぎっ!」
クリエルにしては珍しく、ジェイトンをほめ、次の攻撃を指示する。
トカゲを倒しながら、少しずつ群れの中心からの離脱をこころみていた二人だった。
「くりちゃんっっ!!」
ジェットンがクリエルに叫ぶ。
「魔力なくなったぁ~~~~」
いやーん・・・。と、両手を両頬にあてて伝えるジェットンにクリエルの言葉がつきささる。
「はっ・・・モンクになればいいさ」
「ちょっとぉ! なんてこというのよっ」
トカゲと側によってきたヤグードをそれでも拳で殴りつけながら、ジェイトンはクリエルに抗議する。
「いや、まあ、なんだ。あれだよ」
「どれよっ!」
「モンクと言われるのがいやなら、腰にぶら下がっている片手棍でなぐりゃいいだろう・・・・ジェリー」
「あ・・・・・」
殴る手を止めて、ふと、携帯していた片手棍に手をやり、ジェイトンはほほほほと笑ってごまかし片手棍で殴り始めた。
だが、これだけの敵を二人で突破するのは難しく、魔力も尽きた今、もはや絶体絶命であることにはかわりはない。
「ジョン・・・覚悟はできているな?」
クリエルの言葉にジェイトンは頷き、「できてるわ」と頷いた。
「「生き延びる覚悟が!」」
二人は同時に言うと、再び本格的な戦闘を開始したのだった。
体力もすでに、限界ぎりぎりであった。武器を握り締めている手に力がはいらない。一歩進むごとに敵が群がるこの状況で二人は本気で覚悟を決め始めたそのとき、
「サンダガ3!!」
「エアロガ3!!」
「クリエルの体力回復! ケアル5!!」
「ジェイトンにリフレッシュ!」
全ての声が同時に発せられた。
「じゃじゃーーーん! 正義の味方アイーシャ軍団登場!」
「おせーよ!!」
待ちに待った、援軍の到着だった。
「グッキー! そこからはなれろっ! 」
クリエルの声と同時に、黒雲の中からヤグード数体が出現し、グッキーへスタンの魔法を掛けたかと思うとフェイリーをつかみ上げ黒雲の中へと戻っていった。
「フェイっ!!」
スタンの魔法が解けると同時に、グッキーはためらいもなく黒雲の中へと後を追い飛び込む。ライゼルもまた、その後に続いた。
「おいっ!! グッキー! ライゼルっ!!」
クリエルの制止の声もむなしく、黒雲の中へ消えていく三人を追いかけようとするが、身動きすることがままならずに雲が消えていく様子をただ見送ってしまった。
「いっやぁぁぁぁぁっっ!! どぉしたらいいのよぉぉぉぉっっ!!」
半分パニックに陥ったジェイトンの声がソロムグ原野に響く。
「こいつらを何とかしない限り、無理だな」
「ふ、二人でなんて無理よっ!」
ジェイトンの言葉に、クリエルはそうだろうか・・・と思う。
『確かに。絶体絶命の状況だが・・・・・いや、あの時のことを思い出せ。そうだ、まだまだこんな生ぬるい状況であたふたしていたら、友に笑われるのではないか?
考えろ・・・冷静になれ・・・』
突然静かに目を閉じ始めたクリエルに、ジェイトンもつられるように静かになった。
クリエルが考え、出した作戦にいつでも付いていけるように静かに深呼吸し気持ちを落ち着かせる。
「ジェイトン。範囲魔法をヤグードが集中しているところにぶつけろっ!」
「トカゲちゃんは?」
「無視」
「や~~ん・・・。今日二回もまともに呼んでくれたぁ」
「気のせい」
ジェイトンの範囲魔法がヤグードの群れを襲う。
「精神が続く限り同じ場所にうてっ!!」
「ぇー」
クリエルの拳はトカゲに、ジェイトンの魔法はヤグードたちへと続いていた。
闇のような雲の中。
すべてが薄暗く、身にまとう空気は息をさせまいとするかのように重く澱んでいた。
そんな中でフェイリーはヤグードに抱えられた状態でいた。薄い半透明の幕の向こうにグッキーとライゼルが透けて見えていた。
「た・・・たすけて・・・・」
小さくつぶやいたフェイリーを、ヤグードは祭壇のような場所に連れて行き、投げるようにその場に置いた。呪縛の魔法を掛けるとフェイリーから離れ呪文を唱え始めた。
グッキーとライゼルはフェイリーを抱えあげているヤグードと対峙していた。
「フェイを離せっ!」
切りかかろうとするライゼルをグッキーが止めた。
「まった!」
「なぜですっ!」
剣をヤグードに向け、いつでも仕掛けられる体制のままグッキーを振り返りライゼルが抗議の声をあげた。
「落ち着いてよく見て・・・・幻影だ・・・」
「え・・・・」
よくよく見てみると、ヤグードの足元がゆらりと揺らめいていていて、少し透けている。
「本体はどこだろう・・・」
落ち着いた様子でグッキーは部屋の中を見回す。薄暗く円形の部屋の中には、通路どころか扉ひとつ見当たらない。
「閉じ込められた?」
ライゼルが少し不安げに言う。
「目の錯覚かもしれないし、違うかもしれない・・・壁を触りながら探すしかないね」
言うが早いか、グッキーは壁を探り始める。ライゼルもまた、グッキーとは反対側に周り壁を探り始めたのだった。
「ふう・・・一周しちゃったねぇ・・・・・」
二人は部屋の壁に沿って一周し対面したところで立ちすくんだ。あせる気持ちとどうしたらいいのか考えあぐねている自分への苛立ちとで解決策が思い浮かばない。
と、一陣の強い風が二人の側を駆け抜けた。
「うわっ・・・」
飛ばされそうになったグッキーを慌ててライゼルが支える。
風は強い流れのまま部屋の中を渡り、やがて消えた。
「なんなんだ・・・?」
ライゼルが風の吹きぬけた部屋の中をゆっくりと見回す。
「グッキーさん! 部屋の中心をみてくださいっ!」
ライゼルの指差す部屋の中心部を見るとほのかに光ってみえる。
「もしかして・・・・」
二人は頷くと、うっすらと見える光の部分へと向かいその場に立った。
ブゥン・・・・・と吸い込まれるような音と共に、二人は光の中へと吸い込まれていったのだった。
薄暗い部屋から今度は松明が壁にともされた通路にでたグッキーとライゼルの周囲で、再び風が吹き始める。それは、まるで二人を誘うようでもあり、守る様でもある不思議な風であった。
「行こうって言ってるみたい」
グッキーの言葉に反応するように、風は二人を優しく包み、やがて前方に小さな竜巻となって現れた。
「うお・・・・すごい・・・」
思わず、グッキーは驚きの声を上げた。
「て、いうか、なんでしょう・・・これ・・・?」
信じていいのか悪いのか、ライゼルは判断しかねているようだった。が、その小さな竜巻に何のためらいもなくついていくグッキーを見て、慌てて後を追うしかなかった。
「バニシュガ3っっ!!!」
ジェイトンの強力な光の攻撃魔法が炸裂し、ヤグードの群れの中にぽっかりと穴が空いていく。
「くりちゃんっ」
「よくやった! つぎっ!」
クリエルにしては珍しく、ジェイトンをほめ、次の攻撃を指示する。
トカゲを倒しながら、少しずつ群れの中心からの離脱をこころみていた二人だった。
「くりちゃんっっ!!」
ジェットンがクリエルに叫ぶ。
「魔力なくなったぁ~~~~」
いやーん・・・。と、両手を両頬にあてて伝えるジェットンにクリエルの言葉がつきささる。
「はっ・・・モンクになればいいさ」
「ちょっとぉ! なんてこというのよっ」
トカゲと側によってきたヤグードをそれでも拳で殴りつけながら、ジェイトンはクリエルに抗議する。
「いや、まあ、なんだ。あれだよ」
「どれよっ!」
「モンクと言われるのがいやなら、腰にぶら下がっている片手棍でなぐりゃいいだろう・・・・ジェリー」
「あ・・・・・」
殴る手を止めて、ふと、携帯していた片手棍に手をやり、ジェイトンはほほほほと笑ってごまかし片手棍で殴り始めた。
だが、これだけの敵を二人で突破するのは難しく、魔力も尽きた今、もはや絶体絶命であることにはかわりはない。
「ジョン・・・覚悟はできているな?」
クリエルの言葉にジェイトンは頷き、「できてるわ」と頷いた。
「「生き延びる覚悟が!」」
二人は同時に言うと、再び本格的な戦闘を開始したのだった。
体力もすでに、限界ぎりぎりであった。武器を握り締めている手に力がはいらない。一歩進むごとに敵が群がるこの状況で二人は本気で覚悟を決め始めたそのとき、
「サンダガ3!!」
「エアロガ3!!」
「クリエルの体力回復! ケアル5!!」
「ジェイトンにリフレッシュ!」
全ての声が同時に発せられた。
「じゃじゃーーーん! 正義の味方アイーシャ軍団登場!」
「おせーよ!!」
待ちに待った、援軍の到着だった。
by ryo0610hi
| 2006-07-22 17:26
| ジュノ編