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FFXIのキャラですすめる小説


by ryo0610hi
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風の教えるままに  サンドリア編5

「報告は・・・・たのみましたよ・・・」
それがメビウスからの最後の言葉だった。





「うわぁ まっしろ!」
やっと峠を抜けて洞窟から外に出ると、吹雪だった。
なにより、こんなにたくさんの雪を見るのも触るのも初めてだったフェイリーは目を輝かせた。
「気持ち悪いのが治まった途端に、なにんだこの元気・・」
「あはは。こうでなくっちゃね」
ぼやくライゼルにぐっきーは笑って答える。
「まあ そうですけどね・・」
そんな会話をしながらも足はまえに進めている。フェイリーも必死にはぐれないように進む。ここではぐれたから一生戻れなくなると考えたからなおさら必死であった。


『こちら リュウ』
LSパールに連絡が入った。
「こちらアイーシャ。どうした! 無事か?」
『俺は無事。・・だが・・みんなが・・・』
「! まもなくフェ・インに到着する。そこで待てるか?」
『ああ・・動く気力もないよ』
「うむ・・・みんなは無事だと信じよう。あいつらはそんなヤワではないだろう!」
『・・・・だよ・・な・・』
「ジェイトン。急ぐぞ」
そういうと、執拗に後ろをキープしていたアイーシャは突然走るスピードを増した。
「そんないいもの持ってるなら、最初から走りなさいよ!」
移動速度が増す装備を隠し持っていたらしく、ぐんぐん距離が開いていく。
「いやだってですね、冷たいのいやじゃないですかぁぁぁぁぁ」
と、いってフェ・インの中へと吸い込まれていったのだった。
「ほんと・・おいしく生きてるわね!」
いいつつも、笑っているジェイトンだった。


今は光らなくなった台座の中央の紋章をリュウは見つめていた。
後悔だけが先に立つ。
中の仲間からはあれっきり返事もない。
自分は、命令に従っただけだ。
しかし・・ほんとうにそれてよかったのか?
ぐるぐると同じ問いを自分の中で繰り返す。
「リュウさん・・」
はぁはぁと息を切らして、そこにアイーシャはいた。
普通じゃ考えられない速さで、駆けつけた彼女を労わる言葉すら、今は出てこない。
「リュウさん・・。状況せつめいを・・たのめる?」
「あ・・ああ・・ちょっとまってくれ、ちょっとでいいから」
苦しそうにそう答えたリュウに頷き、アイーシャは部屋を見回した。
「小部屋。台座に紋章・・・。少し前のフェイリーたちの事件の時もそういっていたな・・。なにかつながりがあるのか?」
「『我ノ 魂ナル モノ カエセ』」
「え?」
小さい声で、でもはっきりとリュウはそういった。
「『我ノ 魂ナル モノ カエセ』そう言っていた」
「敵が?」
「ああ」
「我の魂となるもの・・・」
アイーシャが紋章を見つめて考え始める。なにかが一つにつながるような気がする。なにかが・・。
と、小部屋の入口があいて、ジェイトンがよろよろと入ってきた。
「はあ、やっと追いついた。リュウちゃん。怪我はない?」
ジェイトンが台座に近寄ろうとした瞬間、それは起こった。


「あの人たちが負けるなんてこと・・あるはずはない・・ないよ!」
パールでの会話を聞いて足がとまってしまったグッキーに、ライゼルが励ます意味もこめて強く言う。
「グッキーさん。俺たちがすることはまずは 現地にいって合流することだ。ここで止まっていたってなにも始まらない」
「そ・・そうだね。ごめん。僕がいちばんしっかりしなくちゃだった。ごめんね。ありがとう」
なにもいうことができないでいたフェイリーは、そっと励ますようにグッキーの手を握った。
「うん。フェイちゃんにもごめんね。いこう。もうすぐだよ」
「はいっ」
止まった分を取り戻すかのように、全員は走り出したのだった。



「ぐあっ!!!!!」
ジェイトンの真上に、気を失ったメビウス・スラグ・カイル・クリエルが落ちてきたのだ。そしてトドメにターリが。
「!!」
「ちょっ・・おもたいっ・・」
まっさきに我に返ったアイーシャが駆け寄り、脈を診る。
「リュウ! まだ息はある、レイズを! ジェイトンもつぶれてないで急いでくれ!」
「じゃ二人ぐらいよけてくれないかしら・・」
「ぇー・・・」
「ちょっと・・なにそのえーって・・」
大急ぎで全員にレイズをかけまくり、それでもまだ気を失ったままの彼らが落ち着くまで、ほかの冒険者が面白がって小部屋に入り込まないようにという意味も込め、ここにキャンプを張ることに決めた。
「しかし、ボロボロだね。そろそろ、なにが起こったのか話をしてもらおうかな」
アイーシャが改めてリュウに向き直ったとき、小部屋の扉が騒がしく開いた。
「きっとここだよ。今度こそまちがいない」
「ほんとぉ? もう何回もここの通路通ってるよぉ」
ライゼルの変な自信に満ちた声と疲れ切ったフェイリーの騒々しい会話が、重かった小部屋の空気をいっきに軽くする。
「援軍の到着だ(笑)」
アイーシャが破顔して、三人を迎え入れたのだった。
「たどり着いたね。いいタイミング。とりあえずみんなは無事。ちょっと疲れて寝ているだけだから静かにね」
ウィンクを軽く決めて、フェイリーに向かって右の人差し指でしーっと合図した。
「無事なのですね?」
グッキーが確認するように聞きかえすと、アイーシャもジェイトンも無事だと力強くうなずく。
「よかった・・・。よかった・・・」
グッキーはほっと胸をなでおろし、倒れた仲間のもとに静かに近寄り寝息を確認してから、邪魔にならないところへ移動した。
フェイリーもグッキーにならってそばに行こうと台座に近づいた時だった。
今までなにごともなかったただの紋章が描かれていた台座が突然ひかり始めた。
「この模様と光・・あのときの!」
ライゼルがフェイリーをかばって台座から離れる。
グッキーもまたフェイリーのそばに立ち、警戒を強める。
「そうか! もしかしたら・・いや。。しかし・・」
アイーシャがなにかわかった風ではあるが、今一つ歯切れが悪い。
「中に入ったらだめだ。中に入ると力が抜けて実力が発揮できなくなるんだ。装備も武器もすべて重くなって!」
光り始めた台座に近寄ったアイーシャの腕をつかみ止めて、リュウは言う。
「それで?」
「それで・・中にはボス格のでかいスケルトンと従者らしきスケルトンが二体。それだけならいけそうだと思ったんだ。
ところが雑魚スケルトンが際限なく沸き始めて、俺のMPもなくなりかけて、メビさんの命令で脱出しろと・・・」
リュウの口調がだんだん暗くなっていく。
「あのとき、俺がテレポを唱えていたら、もしかしたらみんなこんなことにならずには・・」
「いや、それはないな」
声が下から割り込んできた。
「カイル! 起きたらだめだ」
グッキーが慌ててカイルの元に近寄り、起き上がろうとする彼を押しとどめた。
「あのスケルトンの群れの中に飛び込んで、テレポなんかしたら、詠唱終わる前にリュウさんが倒れてたぜ・・。
あの時の判断は正しいよ。おかげで俺たちがこうしていられる」
「カイル・・・」
「そういうことです。リュウさん、つらい思いをさせました。すみません」
メビウスが起き上がろうとしてめまいがしたのが、すぐに横になる。
「メビさん・・・」
「う~。まだちょっとダメですね」
「無理はしなくていい。安静にしてて」
アイーシャはメビウスに頷いて、リュウに話の続きを訪ねた。
「で、『我ノ 魂ナル モノ カエセ』という言葉は、どこから?」
「ボス格のスケルトンだと思う」
「思う?」
歯切れの悪い返事に、アイーシャが突っ込む。
「ああ、はっきりしないのは、部屋の中全体から聞こえたような気もするんだ・・・」
「ほぅ・・・」
「あついっ!!」
二人の会話にとつぜん、フェイリーの悲鳴が割り込んだ。
「フェイ、どうしたっ」
胸を押さえてうずくまるフェイに、ライゼルが覗き込むようにして声をかける。
「これ・・あつ・・い・・」
ネックレスにしてお守り代わりだと、大事に身に着けていた、あの事件の時の「骨」。それが赤く膨らむようにして
熱を持っていた。
「そうか・・やはりそうなのか・・」
アイーシャが確信を持ったようにして、その骨をにらみつけた。
「それが核になるものなのか!」
小部屋の壁を拳で思い切り殴り、アイーシャは怒りに震える息を深呼吸で落ち着かせ、フェイリーに向き直った。
「フェイちゃん。それを『誰にもっていろ』といわれた?」
アイーシャが骨を指さして尋ねる。
「ウィンダスの兵隊さんが、もう中身はなくなったから、ご両親の形見としてもっていていいよって、紐を通して首にかけてくれたの」
それを聞いて、アイーシャの顔が怒りでゆがむ。
「なんてことを・・まだこの子をおとりとして使おうというのか!」
なにかが一気に動き出したのである。
by ryo0610hi | 2010-11-24 19:13 | サンドリア編